小学全学年対象 <劇> 80分(休憩10分含む)

子象物語

トンキーよ永遠に

原作:「上野動物園史」より 脚本:だんいっせい   演出:伊東孝則

ストーリー

今から80年程前、世界中を巻き込んだ大きな戦争がありました。
その為に人々は着る物や食べる物も少なくなり、芋や豆の粕で飢えをしのいでいたのです。しかし苦しいのは人間だけではありません。上野動物園の動物達も同じように少ない食物で頑張っていたのです。
そんなある日、軍部からすべての猛獣を殺すようにとの命令が届きました。
空襲になり猛獣が街へ逃げ出さないための処置でした。
園長や飼育係の三吉さんは必死に反対しましたが軍の命令には誰も背けません。動物達は次々と毒入りの餌や注射で処分されていきました。
子象トンキーと大の仲良しの健と良子は気が気ではありません。
そしてついにトンキーの順番がやってきたのです……。

制作にあたって

私は昭和24年、インドのネール首相から日本の子供達へ平和の使節として贈られた象「インディラ」の姿が目に焼きついて離れません。
それは戦後の貧しかった少年にとって何とすばらしく写ったことでしょう。
あの日からもう半世紀以上が過ぎました。
私達はいつの間にか私達日本人が「トンキー」や動物達を殺してしまった事を忘れてしまっています。現代では生命の軽視は、単に戦争にとどまりません。
事故や自然破壊、環境汚染など生活の隅々まで及んでいます。平和の尊さを、生命の重さをどうか知って欲しい、感じて欲しいと祈りつつ書いた作品です。
(だんいっせい)

スタッフ

原作:「上野動物園史」より
脚本:だん いっせい
演出:伊東孝則
音楽:白神俊之
衣装:佐川恵麻

象製作:スタジオムーン
美術:ガランアート企画
照明:渡邊優子
制作:劇団トマト座

観劇後にお寄せいただいた感想

中学校の先生方へのアンケートより抜粋

● 戦争をテーマにしたこの作品は、みなさんの熱い演技で、かなり心に残る演劇でした。1年生は、ちょうど戦争の勉強をしているところだったので、より興味を持ってくれたのがよかった。舞台の背景や、オリの転換の工夫など、アイデアがたくさんあって、文化祭の取り組みに、たいへん参考になりました。(北海道)

● テーマがわかりやすく、親しみやすい内容だった。キャストの人たちの声もよく通り大道具が実に効果的に製作されていた。戦争の悲惨さ、平和の大切さを生徒なりに実感し、熱の入った演技には感動したようだ。生徒の心を引きつけるすばらしい劇だった。(鹿児島県)

● 他劇団が童話・昔話の焼き直しの演目にしているのに対して、オリジナルで臨まれていたことが決定の材料でしたが、それも成功したように思います。難度も高くなく、低くなく、みんな楽しめたようです。セットの展開など生徒にとっても勉強になるところも多かったように思います。(宮崎県)

● 戦争がバックグランドにある内容でしたので、平和教育という観点から事前事後に指導の時間をもっと取った方が良いと思いました。(東京都)

小学校の先生方へのアンケートより抜粋

● たいへん感動的な作品でした。作品のもつテーマが学年に応じて子どもたちの心に伝わったと思います。低学年の児童には少々難しかったようだという意見もありましたが、笑いあり、涙あり、教職員もどっぷりつかっての鑑賞会でした。(埼玉県)

● 子どもたちに、「命」や「平和」について考えさせるいい機会となりました。ただ楽しいだけや、良かったというだけでなく、自分の生活や、世の中に目を向け考えることのできる良い作品だったと思います。(京都府)

● 物語自体は本で読んだことのある子が多く、どのような印象をもつのかと思っていましたが、作文を読んでみると、また違った印象をもっている子が多く「真新しいもの」ではなくても、充分子どもの心に響いていくものと感じました。フロアの子ども達を見ていても途中、ザワつく場面がありましたが、それでもシーンとなる瞬間があり「集中力」を感じることができてよかったと思います。 特に後半は、セリフが少なかったにもかかわらず子どもの集中力が途絶えなかったのは、子どもをひきつける演技力の賜のような気がします。子どもは正直です。いい作品、いい演技は集中してみます。その点、昨年に比べて大きくかわりました。感謝しています。(東京都)